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透析の肝は心臓

透析治療とは何かを一言で言うと、体から毒素と余分な水分を体から除くことと言える。余分な水分については痛くも痒くもないので、関心が薄い患者も多い。足などを注意深く観察し、触ったりすれば、むくみがわかるから、体に余分な水分が溜まっていることがわかる。

余分な水分が溜まることで一番問題になるのは、ずばり心臓だ。心臓は血液を全身に送っているが、余分な水分が溜まると心臓に負担がかかり、全身に血液を送るのが難しくなる。体の組織は血液のめぐりが悪くなると、その組織の細胞が死に始める。やがて、組織が死に、臓器が死に、やがて個体の死に繋がる。だから、全身に血液がめぐること、つまり、心臓が元気に働くことが大切だ。そして、心臓が元気でいることが長生きに直結する。

透析患者は腎臓が働かないので、基本的に体の水分量を自分で調節できない。だから、医療者が余分な水分量を推測して、血液から適切な水分量を除く必要がある。除水量を決める目安となるのが、ドライウェイトと呼ばれる目標体重だ。理想的には毎回の透析後にドライウェイトで終わるように除水する。透析患者の場合、水分を飲んだ分だけそのまま体重増加になりやすい。「食べ過ぎたので、体重が増えました」と言う透析患者がよくいるが、実は食べ物の量よりも水分摂取量の方が体重増加につながりやすいことは、あまり知られていない。さらに患者にとって理解しにくいのが、食事量が減ると、逆に余分な水分が体に溜まりやすくなることだ。食事量が減ると、タンパク質が減るため、浸透圧の関係で血管の外に水分が溜まりやすくなる(つまり、むくみやすくなる)。だから、水分を摂っていないのに、余分な水分が体に溜まることがあるのだ。だから、医師は患者の食欲をいつも気にする。食事量が減るとドライウェイトを下げないといけないことがよくある。食事量が減っているのに、なぜドライウェイトを下げる必要があるのか、患者さんにはなかなか理解してもらえない。要は、食事量と水分のバランスが大事なのである。患者は体重を下げると不健康になり、体が弱くなると信じているので、ドライウェイトを下げたがらない人が多い。しかし、そのままにしていると、血液の量が増えすぎて心不全を起こす。心不全になると呼吸困難、意識障害、極度の疲労など苦しい思いをするが、実は、心不全が最も怖いのは、心臓に確実にダメージが蓄積することだ。心不全を起こす度に寿命が短くなっていくと言ってもよい。

医療者と患者の間には医学的知識のギャップがある。患者は自分の身体のことは自分が一番わかっていると信じている。もちろんその通りなのだが、他の大多数の患者さんの体のことは知らない。だから、医療者には説明力が求められる。患者によっては自説を曲げず、どうしても受け入れない人もいる。医師によっては面倒くさがって、説明を諦める人も多い。患者との信頼関係を築けずに終わってしまう場合もある。良い医師とは、ある意味、諦めずに説明を続けられる人かもしれない。

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